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山あいの地で育つ「秩父黄金のかぼす」とそのはじまり@埼玉県秩父市 

山あいの地で育つ「秩父黄金のかぼす」とそのはじまり@埼玉県秩父市 

こんにちは。北海道在住、
野菜くだものハンター、
食と農のコンサルタントの田所かおりです。

 

埼玉県秩父地域で
「秩父黄金のかぼす」を取材しました。

最初に訪れたのは、道の駅みなの。

 

ちょうどその日は
カボスの販売イベントが行われていて、
会場には柑橘のさわやかな香りが
広がっていました。

道の駅の一角では、
部会の方々が来場者に
「秩父黄金のかぼす」の使い方や特徴を
丁寧に説明していて、
その様子からも、
この地域で大切に育てられてきた
作物であることが伝わってきます。

実際にお話ししてみると、
皆さんとてもやわらかく、
温かい雰囲気の方ばかりでした。

そこでお会いしたのが、
JAちちぶカボス部会
部会長の山口辰雄さんです。
(写真左から4番目の方)

この日は、山口さんをご紹介くださった
埼玉県秩父農林振興センターの
芝領一さんも会場にいらっしゃり、
部会の方々とともに来場者へ
「秩父黄金のかぼす」の魅力を
伝えていました。

試食として来場者に用意されていたのは、
ご飯の上に「秩父黄金のかぼす」と
「しゃくしな」の漬物が
添えられたものでした。

一見とてもシンプルですが、
実際に口にすると印象が変わります。

「秩父黄金のかぼす」を絞ったご飯は、
ただ酸っぱくなるのではなく、
ご飯そのものの甘みが引き立ちます。

そこに「しゃくしな」の塩気が重なると、
味の輪郭がはっきりして、
自然ともう一口と
食べ進めてしまうような感覚でした。

強い味付けではなく、
素材の味を整えるような使い方です。

山口さんに普段の食べ方を伺うと、
「焼酎に入れたり、魚にかけたり、
何にでも使うよ」と
教えてくださいました。

その言葉の意味が、
この一口でよく分かります。

話を伺ったあと、
JAの久保さんに案内していただき、
畑へ向かいました。

その途中で立ち寄ったのが、
道の駅龍勢会館の前に建つ
「秩父かぼす伝承碑」です。

秩父のカボスは、
もともとこの土地にあったものではなく、
大分から導入されたものだといいます。

そのきっかけをつくったのが、
元小鹿野警察署長の武内陽一氏でした。

養蚕や林業で栄えていた
秩父の産業が変化し、
地域の活力が弱まりつつある中で、
武内氏は新たな作物による
地域振興を模索します。

自身の故郷である
大分の特産であるカボスに着目し、
同じ中山間地である秩父でも
栽培できるのではないかと考えました。

苗木を導入し、地域の生産者に
栽培を呼びかけるところから始まります。

当初は「売れないのではないか」という声も
あったといいますが、
武内氏は栽培だけでなく、
販売方法や食べ方の提案まで含めて
関わり続けました。

その取り組みは約10年にわたり続けられ、
やがて地域に
カボス栽培が根づいていきます。

こうした流れの中で、
秩父のカボスは組織としても
形を整えていきました。

栽培の広がりとともに
地域ごとに部会や生産組織が立ち上がり、
それらが統合されて
現在の「JAちちぶカボス部会」が
発足しています。

現在、部会には35名が所属し、
年間およそ21トンのカボスが
生産されています。

取り組みは栽培だけにとどまりません。

有機質肥料を活用した特別栽培や、
S-GAPの推進など、
安全性や持続性を意識した
生産が行われています。

また、道の駅での販売やイベントでのPR、
飲食店との連携によるメニュー開発など、
販売面での工夫も重ねられてきました。

さらに、規格外のカボスを加工し、
ペーストや飲料、菓子などへと
展開することで、
新たな利用方法も広がっています。

 

道の駅みなので販売されていた
「かぼすサイダー」も目にしました。

こうした加工品は、
部会の取り組みだけでなく、
地域の事業者によっても展開されていて、
カボスの使い方が少しずつ
広がっていることが感じられます。

畑に着くと、
山の斜面にカボスの木が並んでいました。

ここまで来るには、
車で山を登っていきます。

秩父の中でも、日当たりがよく、
比較的暖かい場所が
選ばれているのだそうです。

山間地であってもどこでも育つわけではなく、
こうした条件の整った場所が必要になります。

風や霜の影響も受けやすく、
場所選びは栽培の大きなポイントです。

「若い木のうちは
特に手をかけないといけないんですよ」

山口さんはそう話します。
植えてから数年の管理が、
その後の生育に大きく影響します。

収穫の判断も簡単ではありません。

「大きさじゃないんです。果汁ののりなんです」

見た目ではなく、
果実の中にしっかり果汁が
のっているかどうかで判断する。


その言葉に、
栽培の繊細さが表れていました。

 

秩父のカボスは9月頃から
緑の状態で収穫が始まり、
酸味と香りを活かして料理に使われます。

 

そして11月頃になると、
果実は黄色へと変わっていきます。


この黄色く熟したものが
「秩父黄金のかぼす」です。

緑のカボスは、
酸味と香りを活かして料理に使われますが、
黄色くなると味わいが少し変わります。

 

酸味はやわらぎ、果汁が増えて、
全体にまろやかな印象になります。

 

もともと黄色くなるまで木になっていた実は、
あまり商品としては
見られていなかったそうですが、
その違いが見直され、
今では緑とは別の
使い方がされるようになっています。

 

同じカボスでも、
収穫の時期によって役割が変わる。

 

その一つのかたちが、
「秩父黄金のかぼす」です。

 

畑で印象的だったのは、同じカボスでも
見た目や味わいが異なることでした。

秩父では主に4つの品種が栽培されています。

写真は左から
「大分1号」
「豊のみどり」
「香美の川」

「祖母の香」

「大分1号」は、
表面がややごつごつしていて、
いわゆるカボスらしい外観です。
酸味がありながら甘味も感じられ、
「くっとくる」ような
カボス特有の個性があります。

「豊のみどり」は、
緑が濃く皮が厚めでしっかりとした印象です。
酸味が強く、やや苦味も感じられ、
全体としてシャープで力強い味わいです。

「香美の川」は、
表面がなめらかで
肌がきれいなのが特徴です。
酸味と甘さの両方が感じられ、
バランスのよい味わいです。

「祖母の香」は、
果皮に筋が入り、
見た目にも特徴があります。
酸味はありながらも爽やかで、
きりっとしつつ軽やかな風味でした。

こうして見比べ、食べ比べてみると、
「カボス」という一つの名前の中に、
さまざまな個性があることが分かります。

カボスは、料理の主役になることは
少ないかもしれません。

けれど、少し絞るだけで味が変わり、
香りが立ち、料理の美味しさを一段階上げる。

その役割は確かで、
日々の食卓の中で生きている柑橘だと
感じました。

秩父のカボスは、大分から持ち込まれ、
この土地の中で育ち、
受け継がれてきました。

そして今は、
部会の方々がそれぞれの役割を担いながら、
栽培や販売、利用の広がりを支えています。

畑で見た木の姿と、
道の駅で味わった一口。

その両方をつなぐように、

「秩父黄金のかぼす」は
育てられているように感じました。

道の駅みなの皆野農産物直売所

所在地:秩父郡皆野町皆野3236-35

TEL:0494-62-3501

道の駅龍勢会館
所在地:秩父市吉田久長32
TEL:0494-77-0333

気になった方はぜひどうぞ。


取材にご協力いただきました皆様、

ありがとうございました!

 

今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。

 

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