歌川広重も描いた!「水口かんぴょう」の栽培と美味しさの秘密@滋賀県甲賀市

こんにちは。

北海道在住、
野菜くだものハンター、
食と農のコンサルタントの
田所かおりです。

今回は、滋賀県の伝統野菜
「水口かんぴょう」についての
レポートです。

「水口かんぴょう」の歴史は古く、
約400年前から甲賀市水口町で
栽培されてきた特産品です。
2024年3月にGI認定を取得されました。
歌川広重の浮世絵、
東海道五十三次「水口宿」にも
かんぴょうを干している風景が
描かれています。

そんな伝統野菜「水口かんぴょう」を
求めて、8月上旬に
JAこうかの上田さんのご案内で、
宿谷さんの畑に伺いました。

こちらが今回お話を伺った
水口かんぴょう部会 部会長の
宿谷光典さんです。

宿谷さんのお宅では、
昔から自家用にかんぴょうを
作られていました。
そして、15年ほど前に
かんぴょうを削る機械を譲り受け、
販売用の干した「水口かんぴょう」を
作られるようになりました。

まずは、栽培について伺いました。
「水口かんぴょう」の培面積は、
干す作業もあるため200平米ほど。

今年は3月20日くらいごろに播種し、
本葉が3、4枚くらいの
4月末から5月連休にかけて
定植されました。
ちなみに、昔は4月20日くらいに
直播されていたそうです。

肥料はカボチャ並みに必要とのことで、
4月に堆肥を、
定植時期に鶏糞を大量に施すそう。

おおよそ株間は1m、畝幅は4m50㎝、
寒さ対策で黒マルチを使用します。
マルチの中に設置した冠水チューブは、
GI認定により取材が増えて
ちょっとでも畑の
緑色を持たせるためとのこと。
取材対応いただき頭が下がります。

ちなみに、潅水の話題でいうと、
今年は7月20くらいに3日ほど連続で夕立にあい、
その後、水を上げても球が大きくならず、
株元から黄色く変色してきているそう。
田んぼで作る場合は
地割れが起きやすいので、
水やりは大事とのことでした。
そして、連作障害はないとのことでした。

では話を戻して、
定植の次に行う作業は摘心です。
子づるを伸ばし、
そのわき芽に実を生らせるために
本葉が5、6枚の時に行います。
1株に4玉くらい生らせます。

花は6月初めくらいから咲き始め、
先に雄花、
その3,4日後に雌花が咲くそう。
面白いですね。

摘果はしないけれども、
実が横を向いた状態で大きくなると、
平べったくなってしまうので、
丸く仕上がるように、敷き藁をして、
立てた状態に直す作業をします。
この作業を、「玉なおし」と呼びます。

また、カボチャは子づるが主体だけども、
かんぴょうは孫づるにも実が着きやすく、
敷き藁がない所に着果するのを
防ぐために、
孫づるを切る作業もされるそうです。

つる枯れ病予防に
ネギを一緒に植えられていました。
これは、メロンと同じですね。

やわらかい葉を食害する
ウリハムシの予防策として、
敷き藁をする6月末くらいまでは
トンネルをかけるそうです。
ちなみに、こちらがウリハムシです。

被写体としては悪くないのですが、
困った虫ですね。

今年の収穫は6月29日から。
播種の時期を変えても、
収穫時期はそれほどずれないそうです。

夕方7時過ぎごろに
収穫した玉を持ち帰り、
翌朝加工をされます。

加工作業は、お天気が崩れなければ、
毎日続くため、「水口かんぴょう」は
栽培よりも加工作業が山場とのこと。

現代では、ハウス内やガレージの中など、
雨の当たらないところで干される方も
いらっしゃるそうですが、
宿谷さんは、昔ながらの方法で、
直射日光が当たる場所で
干されています。

では、いよいよ加工作業です。

まず、機械にかんぴょうをセットします。

皮を剥きます。
厚さは1~2ミリほど。
取り遅れると皮が固くなるそう。

こちらの白い部分が加工する部分です。
水分吸収が悪いと筋が出るそう。

そして、シャーっと削っていきます。

かんぴょうの幅は3㎝、厚さは2~3mm。
幅、厚さ、長さはそれぞれの生産者さんで
異なるそうです。

削り終わったら、次は干す作業です。
大体120センチほどの長さにして
竹の竿にかけていきます。

そして、日光の当たる干す場所へ
移動します。

半日で下の写真くらいまで乾きます。

束ねてあるのが、前日干したものです。

竿についた部分は、
湿度の高い朝の時間帯が
剥がしやすいとのこと。

竹はある程度太くないと、
かんぴょうの自重で切れてしまう。
以前は、竹に稲わらをまいていたけど、
今は繊維がかんぴょうに
ついてしまうことがあり、
それが袋に入って異物混入になったり、
虫も寄せ付けてしまうため、
今は、稲わらを巻いていない
とのことでした。

乾燥工程は、晴れの日は2日、
風があると良いとのこと。
雨が降ると3~4日。
雨が降ると竿にかかっている部分が
白く仕上がらないそうです。

ちなみに、1つ大きめの球だと、
3玉剥いて2竿くらいだそう。
そして乾かすと、元の1.2%の重さに。

乾燥後は、袋につめられ、販売されます。

ここでふと疑問に思ったのが、
昔ながらの削り作業の方法です。
歌川広重の浮世絵でも、
結構長めのかんぴょうが
干されていますが、
どのように削っていたのでしょうか。

宿谷さんが小学生のころのお話を伺うと、
輪切りにして、かんなで、
内側か外側から削ってしたそう。

ちなみに、宿谷さんのお宅は、内側派。
内側から削ると、
外の皮を剥かなくて済むのと、
果肉がやわらかいので、
内側からの方が剝きやすいそう。
感心と納得でした。

そして、こちらのかんぴょうの中心部分が
「なかご」と呼ばれる部分。

実はこの部分は、
新鮮なうちにしか食べられない
レア食材なのです。
種を除いていただきます。

これだけほしいと、
ご近所の方がもらいに来ることも
あるそう。
興味津々でお話を伺っていたところ、
なんと、
おばあ様が炊いてくださったものが
あるそうで、
いただくことができました。

お出汁がしみ込んでいて、美味しい!
つるっと、ふわっと、とろっとした食感。
果肉の密度は、
とうがんと、かんぴょうの
間くらいでしょうか。

ご近所の方の気持ちがわかりました(笑)

普通の干した「水口かんぴょう」は
どのような召し上がり方をされるか
伺ったところ、
ちらし寿司、巻きずしが定番で、
ひじきの煮物や炊き込みご飯、
昆布巻などで召し上がるとのこと。
さすが、「水口かんぴょう」の
調理バリエーションが豊かです。

採種についても伺いました。
種は自家採種をされていて、
実の形が良いものを選抜しているそう。
在来種なので、実の形が棒状のものや、
茄子のように下部が膨らんだ形のものも
出るそうです。
人によっては、下部が膨らんだものを
選抜する方もいらっしゃるそう。

種とり用には、1個あれば十分だけど、
2個残して、混ぜて播種されているそう。
確かに、世代をつなぐ過程で、
1個よりも2個の方が
偏りが防げますね。

実際の作業としては、
畑に5、6個残しておいて、
乾燥してカラカラになってから、
畑から持ってくるそう。
畑に丸い玉が転がっている
景色を想像すると、
なかなか面白い光景だなと思いました。

そして、こちらが昨年の採種用の実です。

大きい!
種は、2月末か3月頃に、
お尻の方に穴を開けて、ほじくり、ひっくり返して、
取り出します。

中身がウレタンみたいな綿と種なので、
ほじくるのはそれほど
大変ではないとのこと。

こちらが左から、ダメな種とOKな種。

種はウレタンのような綿をとって、
消毒などせずに
そのまま使われるそうです。

栽培と加工、夏場の忙しさは
本当に頭が下がりますが、
ぜひ、後世につないでいってほしいです。

この日の夕食は、この土地で調理される
「水口かんぴょう」が食べたい!
ということで、
予約をしていたふじ吉さんへ。

「水口かんぴょう」が使われたお料理と
大将との会話も交えて
ご紹介したいと思います。

1品目は、かんぴょうのお鍋です。

先ほどレア食材としてご紹介した
「なかご」が使われています。
鶏のお出汁と、ゆず入りの大根おろし。
お出汁が沁みていて美味しい。
やはり、とろっとしていて、
とうがんよりさっぱりです。

タネの部分は、
お刺身でも食べられるとのこと。
味はあまりなく、
はんぺんみたいな食感だそう。
調理に関しては、
種の位置に規則性がなく、
取るのが大変だそうです。
確かに、お客様に提供するには、
見た目も大事ですよね。

2品目は、手前が「かんぴょうの天ぷら」。
奥が「鱧のあられ揚げ」です。

かんぴょうを天ぷらで食べる発想が
全くなく、驚きました。
かみごたえあり、甘いです。
そして、美味しい。
これは、やみつき系です。

干されたものを
そのまま使われるとのことで、
干し方によって味の出方異なるそうです。
味付けはなく、そのままの甘さ。
大将によれば、干したてのが
甘いとのことでした。

3品目は、かんぴょう巻です。

江戸前のイメージのかんぴょう巻きは、
関西ではあまりしないそう。
べっこうのようにせず、炊いたそう。
確かに、これまでの
かんぴょう巻のイメージとは異なり、
瑞々しく、さっぱりとしたお味で
美味しくいただきました。

歴史のある「水口かんぴょう」、
お正月のお料理に使われてみるのも
良いのではないでしょうか。

◆JAこうか花野果市水口店
所在地:滋賀県甲賀市水口町水口6111-1
https://www.instagram.com/hanayakaichi/

◆ふじ吉
所在地:滋賀県甲賀市水口町梅ヶ丘1-9
http://fujiyoshi-kyonoaji.com/

気になった方はぜひどうぞ。

取材にご協力いただきました皆様、
ありがとうございました!

今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。

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