三浦農園さんの「仙台せり」づくりに込めた想いと収穫体験@宮城県名取市

こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンター、
やさい直売所コンサルタントの田所かおりです。

今日は、「仙台せり」のレポートです。

昨年9月にせりの定植、11月に収穫の取材に、
仙台市の南に隣接する名取市にある
三浦農園さんを訪問しました。

せりの定植の方法が興味深いからと
つないでくださったのは、
鹿児島大学の中野八伯さん。

そして、仙台せりの情報を親切な皆様に
沢山いただいたのですが、
情報量が多く記事にまとめきれない
ということで、
三浦さんの仙台せりへの想いと栽培、
収穫体験の内容でお届けします。

こちらが三浦農園の三浦隆弘さんです。
まず、「仙台せり」の定植までの一連の
流れをレポートします。

せり栽培は年中、
畑の一角のどこかにせりがある状態です。

こちらは、昨シーズン栽培した畑に広がる茎。

これらの茎を8月、9月に収穫して
翌シーズンの苗として使います。
種代もかからず、
種の保存よりも栄養繁殖の方が良いでしょ。
と三浦さん。

こちらが育苗専用のハウスです。
シートで覆っているのは、
苗用に収穫した茎。
水をかけて、発酵熱で元々あった葉が枯れ、
内側から次の世代を出させます。

モヤシのような芽が出てきています。
芽が2~3㎝くらいで定植するのが
望ましいそうです。
生命力が強いですね。

三浦さんがお使いのせりの種類は、
元々の系統としては「名取5号」。
別のせり農家さんが来たら苗などを交換して、
今まで独自に育ててきたそうです。
寒さに強く、100gあたりの歩留まりが良く、
そして、何よりおいしいとのこと。

おいしさの秘密はこれだけではありません。

こちらがせりを定植する田んぼです。
井戸水をかけ流して、
高温障害にならないようにしているそう。
また、この自宅の一部にある屋敷林を含めて
生態系が形成されていて、
有機質肥料、殺虫剤、殺菌剤を使わないことで、
沢山の生き物が住める環境を作り、
その中で作ると、せりが美味しくなるのだそう。

絶滅危惧種の虫、ゲンゴロウ、ミズカマキリ、
クモ、カエル、ヤゴ、捕食系の虫もいるので、
殺虫剤はもちろんかけません。

こちらは、「二ホンアカガエル」。
吸盤がなくてコンクリートの壁を
上ることができないどんくさいカエル、
なんだとか。
このカエルもとても珍しいそうです。

よく見ると泥の表面には
びっくりするほど生き物の這った跡が。
ものすごい豊かな環境ですね。

では、9月取材のメインイベント、定植です。
定植は、2週間ごとに行います。

写真でお分かりいただけるでしょうか。
そう、ばらばらと苗を投げているのです。

地域によっては、苗を
揃えて並べたりするところもあるそうですが、
ここでは、「投げる」が正解。

そして、塩を高い位置からふるように
「楽しく投げる」が大正解なのです。

定植というよりは、投植!
まさかこんなスタイルとは
思いませんでした。
おつなぎいただいた、中野さんに感謝です。

しばらくたつと、せりが育ち始めます。

こちらが新しく葉を広げ始めたせりです。

定植後はセリの成長とともに
水位を上げて栽培管理をします。

実は、三浦さんは仙台せりを
仙台の食文化として根付かせた第一人者。

名取でのセリ栽培は400年続いていて、
三浦さんも生まれた時には
ご家族がせり農家をされていました。

三浦農園さんでは、
「みょうがたけ」も生産されているのですが、
「みょうがたけ」は、
東京の料亭や割烹に出回っていましたが、
地元では流通していませんでした。
時代の流れで接待需要が減ったとき、
「みょうがたけ」の需要も減少。
この経験から、
商品を作るだけではだめ、
地元に文化として根付かせないと!
と心に決めたそう。

そして、
「美味しいセリ鍋が食べたかったら
仙台に来てください」
東北随一の都市である仙台、
興行なども多く、近隣から人が集まりやすい、
仙台に来たらせり鍋という
中核都市圏で成立する文化を
仕掛けてきました。

今では、「仙台せり」を
みんなが待ってくれている状態。
出せば売れる。
でも、この状況が落ち着いてきたら
品質が求められるので、
ブランド化に力を入れているそう。

こういう考えに至ったのは、
お客さんに教えてもらったことも
大きかったと言います。
せり農家は名取市に70~80軒ほど
あるそうですが、
部会を出てから、世の中が広くて深かったことに
気づかれました。

だから、今は収穫時期には
ひたすら料理人さんに
畑に来てもらって食べてもらう。
その料理人さんの引き出しの中から、
せりをどのようにお客様に提供するか
考えてもらうのだそう。

私も、昨シーズンの畑から
味見させていただきました。
こちらはセリの葉。
強い香りが口に広がります。

こちらが種。
葉よりも爽やかで柑橘系が混じった様な
優しい香り。

こちらはせりのお花です。
清楚な感じです。

種もお花もシェフが思い思いのお料理に
使われるそう。

環境をつくり、自然のサイクルの中で、
素直な植物の力を引き出すせりの栽培。
素敵だと思います。

9月の田んぼはこんな感じでした。

必ず収穫体験に来ます!と伝えて、約2か月後。
こちらは11月下旬の様子です。

田んぼのせりの成長が見て取れます。

青空の下、キラキラ輝くせり。
美しいですね。

せりの収穫は、毎年地域のテレビ局の
新人アナウンサーの方が
取材にこられるという、
新人アナにとっては登竜門的な行事とのことで、
私も渓流釣りスタイルをお借りし、
収穫を体験させていただきました。

影で指している(つもりの)、
このあたりを収穫させていただきました。

田んぼに入ると、土がふわふわです。
さすがビオトープ。

三浦さんのレクチャーを受け、
まずはセリの根が張る少し下くらいに
手を入れ、根をほぐします。

そして、根と茎全体を傷つけないように
土を落として、カゴに入れます。

ちょっと風が強かったのですが、
私にとっては楽しい作業でした。

そして、洗浄するため、洗浄装置のあるお部屋へ。

水が溜められた浴槽にセリを半分浮かべながら、
根の部分についた土を
高圧で出てくる水のカーテンで洗い流します。

結構水圧が強いので、初めて水を当てた時は
せりが持っていかれそうになり
冷っとしました。

その後は、調整作業です。

三浦さんの奥様のレクチャーを受け、
「迷った茎葉は全部取り除く」ということで、
ひとりごとを言いながら、
迷う→取り除くを繰り返しました。

このままお客様の元に届くと思うと、
責任重大です。
それでも無事完了。

奥様の仕事、綺麗です!

そして、新聞紙にくるんで出来上がり。

自分で作業した分を頂きました。
このセリは、翌日アルケッチャーノさんのところへ。

三浦さんによれば、
年末年始にかけてせり需要が盛り上がるけれども、
一番美味しいのは3月なんだそう。
これからですね。

3月にも食べたいけれども、伺った時期のも食べたい!
ということで、三浦農園さんのセリ鍋が食べられる
仙台市内にある飲食店の「こうめ」さんでの
せり鍋レポートもアップしております。

もしよろしければ、こちらもご覧ください。

ちなみに、札幌でも数件、
三浦さんのせりが食べられるお店があるそうなので、
今度行ってみたいと思います。

せりを作ることで、
せりを食べることで、
生態系を守っている。

食文化含め「仙台せり」づくりに尽力されている
三浦さんが実践される農業は、
SDGsが叫ばれる今の時代にマッチした農業でした。

今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事