2シーズンを経て育つ色白の江戸東京野菜「立川うど」@東京都立川市

こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンターで、
食と農のコンサルタントをしている
田所かおりです。
今回は、東京都の伝統野菜、江戸東京野菜の
「立川うど」についてのレポートです。
軟白栽培される「立川うど」を求めて、
1月中旬に園部謙一さんの畑に伺いました。
今回お話を伺ったのは、
うど生産組合の園部謙一さんです。

まず、立川市周辺での
ウド栽培の始まりについてです。
ウド栽培は、元々三鷹や吉祥寺周辺で
栽培されていました。
立川市周辺では蚕の養殖がされていましたが、
戦後、この辺りが焼け野原になってしまい、
冬場の仕事として始まったそうです。
軟白ウドの栽培には
いくつかの方法がとられますが、
立川市周辺は関東ローム層で
地盤がしっかりしており、
収穫は地面に掘られた穴ぐらで行われます。


この収穫のタイミングだけ注目しがちですが、
穴ぐらにウドの種を蒔いて
収穫するわけではありません。
ウド栽培には2シーズン+穴ぐらでの軟白栽培が
最低でも必要になります。
まず、1シーズン(1年)目。
東京の畑で、種として残しておいた根を
園部さんが東京の畑で育てます。
4月に植えて、
2月下旬から3月頭くらいに掘り起こします。
1個の根(芽)が5、6個に増えるそうです。
連作障害が出るので、1、2年栽培したら、
新しい畑へ移動します。
種となる根は買うことができないので、
翌シーズンの群馬の分と、
東京での増殖の分とに分けて保管します。
翌年の2シーズン目の4月、
群馬の赤城まで約1400株運び、
現地の生産者に委託して
株を大きく育ててもらいます。
この群馬での委託栽培は、
今から50年以上前から
行われているそうです。
なぜ群馬なのかというと、
理由としては、朝夕の気温の差と夕立が多い
山の気候がウドの株を
太く大きく育ててくれるから。
ただ、最近の気候変動で雨が少なくなり、
大きく育たなくなってきているとのこと。
また、群馬でも高齢化と
後継者不足が進んでいるため、
委託先も少なくなってきており、
現在は全農東京さんにも協力してもらいながら、
新たな委託先を探しているそうです。
11月になったら受け取りに行き、
根が乾いてしまわないように借り埋めし
一時保管します。
そして、いよいよ12月上旬くらいから
穴ぐらに伏せこみ、
1か月後くらいに収穫時期を迎えます。
ちなみに、一時保管していた株を
見せていただきました。

この芽の太さがウドの太さに影響するので、
太いものだけを使用します。
1度収穫した根はそれで終わりです。
伏せこみは、根と土をサンドイッチしながら
並べていくそうです。
伏せこみ用の土は、
連作障害、菌核病害があるので
ウド栽培をしていない土を使います。
ということは、取り替える必要があり、
毎年およそ300キロを
穴ぐらから出し入れするそうです。
水やりは伏せこんだ時と、
15日後くらいに行いますが、
その時の穴の温度や
土の乾き具合で調整します。
今回は、12月7日に伏せこみ、
約1か月後に収穫を迎えました。
これだけ手間をかけて作られ、
収穫時期を迎えたウドと
いよいよ穴ぐらで対面することに。


垂直に3.5メートル下り、
穴ぐらに到着です。
湿気があって、地上より暖かいです。
そして、驚いたことに、
穴の壁は土そのままだそう。
粘土質の赤土で、東日本大震災の時も
崩れなかったそうです。
下った先の空間は
奥行き2メートルほどの横穴が
3方向に分かれて、
横穴の高さは1メートルほど。
ウドの長さの理想が75㎝、箱が80㎝、
その高さに合わせた空間になっていました。
1穴で60株ずつ、
3か所で180株が栽培されます。

こちらが収穫時期を迎えたウドです。
真っ白で美しいです。

園部さん曰く、中心の芯と
ウデ(脇から出る枝)が
同じくらいが理想だそうですが、
今回は、地上が寒くなって、
穴ぐらの温度が上がってしまったため、
ウデが長くなったとのこと。

穴ぐらの気温は冬も夏も
18℃ほどに保たれていますが、
今回は地上部の急激な温度変化で
23℃くらいまで上がってしまった
かもしれないとのことでした。
また、ウドはデリケートで、
穴ぐらに風が入ると
赤くなってしまうそうです。
もちろん紫外線もNGです。
店頭のLEDの光でも緑色になりやすいそう。
恰好よく、色白に育て出荷するために、
最後まで気が抜けない
作物であることが分かりました。



収穫したウドは、滑車で引き上げられます。
短系と長系とあるそうで、
今回は短系への箱詰めの様子も
見せていただきました。



「立川こまち」という名前で
出荷されています

ちなみに、短系は2.4キロ、
長系は4キロ入るとのこと。
園部さんは3か所の穴ぐらで、
宅配の注文時期に合わせて
伏せこまれるため、収穫は4月いっぱい。
根を冷蔵庫で冬眠させておけば、
8月くらいまで収穫が可能だそう。
こちらは収穫を終えたウドの根を
土に還す「ウド塚」です。

ちょうどウドの花のあとがありました。
現状、近隣でのウドの栽培は、
年々減っており、
国分寺で7軒、小平で3軒、
小金井はもう辞めてしまったそう。
これだけ手間がかかるけれど、
毎年楽しみに注文をしてくださる方がいるので
続けていらっしゃるそうです。
また、園部さんは地域特産の「立川ウド」を
小学生に伝える活動もされていました。
とても大事なことだと思います。
最後に、園部さんにウドの
おいしい召し上がり方を伺いました。
皮はきんぴら、先っぽは天ぷら、
中は生でも食べられる。
一番好きなのは、
細かく切ってサラダにすること。
シャキシャキ感がたまらないそうです。
地元立川でウドが食べたい!
ということで、「うどラーメン」が有名な
中国料理五十番さんに伺いました。
「うどラーメン」と「うどサラダ」を注文。

うどサラダはみずみずしさとシャキシャキ感と
やさしいウドの風味があって爽やかなお味。

うどラーメンは生とは違った歯ごたえで、
でもシャキシャキしていて、
具材がたっぷり。
こちらも美味しくいただきました。
気さくで丁寧な接客でした。
翌日、朝一番で「ウドラ焼き」を購入。
ウドラというキャラクターの焼印で
このインパクト。

残念ながら、原材料表示にウドの文字がなく、
美味しいどら焼きとしていただきました。
◆中国料理五十番
所在地:東京都立川市錦町1-4-5
トップページ - 中国料理五十番
気になった方はぜひどうぞ。
取材にご協力いただきました皆様、
ありがとうございました!
今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。