![濃厚ねっとり!芋煮会に欠かせない「子姫芋」の歴史と味わい@山形県寒河江市](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2024/12/IMGP0721-scaled.jpg)
こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンター、
食と農のコンサルタントの田所かおりです。
今回は、山形県の伝統野菜
サトイモ「子姫芋」についてのレポートです。
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秋の山形といえば、
河原で大鍋を囲む「芋煮会」。
取材時の翌々日はちょうど
大鍋の芋煮会でした。
その主役である里芋の中でも、
ねっとりとした食感と濃厚な風味が魅力の
「子姫芋」は、地元で愛されています。
そんな「子姫芋」を求めて、
9月中旬に
寒河江市役所の三條さんのご案内で、
黒田さんの畑に伺いました。
こちらが今回お話を伺った
さがえ子姫芋組合代表の
黒田祐一さんです。
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まずは、「子姫芋」の歴史と伝来についてです。
お伊勢参りが流行していた江戸末期、
「子姫芋」は、地区の先祖が帰路で
持ち帰ったお土産として
福島県の会津地方から山形県に伝わりました。
また、幕末ごろになると養蚕が盛んに
行われており、
特に冬場の発酵熱を利用した貯蔵技術が発展。
蚕の餌となる桑の葉を
かます(わら細工でゴザのようなものを
二つ折りにして両端閉じた袋)にいっぱい詰めて
発酵で湿ったものを乾かすために、床下に広げ、
その発酵熱が利用されていました。
現代でも床下に石室があるお屋敷があるそうで、
その気温は大体5℃±1℃で保たれています。
サトイモの栽培には、
冬の貯蔵技術が非常に重要です。
サトイモの種イモは、
冬の間に一定の温度で
保存しなければなりません。
理想的な温度は7℃で、
限界温度は5℃以上、
温度が10℃を超えると
芽が出てきてしまいます。
そこで、養蚕技術を応用し、
発酵熱を利用して暖房することにより
サトイモの種イモを保存する
ことができたのです。
種イモとして作っていたのは
「カラトリイモ」。
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赤い茎が特徴的で、
筋を取ると鮮やかな赤色になります。
DNA的には「海老芋」と同じで、
ほっくり感とねっとり感が
同居したような感じ。
寒河江では子芋を食べる早生の品種です。
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また、「カラトリイモ」は、
芋、茎、葉が食用可能で
すべて無駄なく利用ができることが特徴です。
茎や葉は、生を茹でて
三杯酢で和える料理が一般的とのこと。
美味しいけれども、
近年は、食べる機会が減り、
核家族化によって
料理の仕方が伝承が
途絶えてしまっているそうです。
ちなみにこちらが、
「カラトリイモ」のずいき。
茎を乾燥させたものです。
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私は実家の食卓に出てきたことがありますが、
確かに、一般的な食材とは言えないですね。
独特の風味と食感があります。
当時はこの「カラトリイモ」という品種が
主流でしたが、収量や育てやすさで
「子姫芋」も作られるように。
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「子姫芋」は、「カラトリイモ」に比べて
収量が多く、早く煮えるという芋煮に適した特性と、
そのねっとりとした美味しさもあって普及しました。
ちなみに、「子姫芋」の茎はえぐみがあって
食べられないそうです。
栽培期間中に芽が出てしまい、
肉質が固くなってしまうことから、
一般的には、孫芋、ひ孫芋を食用にします。
株元を見ると、脇から細い茎が
何本もでています。
これが親芋や子芋の芽です。
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親芋の収量に占める割合は3分の1。
親芋は筋張っていて固くてあっさりしたお味。
お味噌汁の具なんかに入れることもあるけれども、
ほとんどを捨てていたそうです。
せっかく食べられるのにもったいないとのことで、
親芋をキムチに加工され販売されています。
SDGsですね。
また、消費者の使いやすさを考え、
そのままの状態だけでなく、
皮を剥き真空パックにしたものも販売されています。
こちらは、その商品を冷凍して保管されていたもの。
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皮が剥いてある方が価格が高いそうですが、
人気なんだそうです。
次は、栽培方法と現代版の貯蔵方法についてです。
「子姫芋」の定植は霜が降りなくなった
5月上旬くらいから行います。
黒マルチをはり株間は30~40㎝、
芽出しした種イモを植えるか、
ポットで苗を植えます。
ポット苗の利点は、少しでも早く育てられ、
植えた後に生育の揃いが良いこと。
その後、畑一面に畝間潅水をして
育てられます。
こちらが、収穫間際の
「子姫芋」の葉と茎です。
葉の下の部分に着色があるのが特徴です。
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収穫は芋煮会が開かれ始める
9月から行います。
9月ごろは収穫はできるけれども
まだ生育の余地あり、
1反あたり1トンと収量は少なめ。
10月に入ると1反あたり3トンになり、
この頃の方が成熟し、
でんぷんの量が多くなり
品質も向上するそうです。
収穫は、株ごと掘り返し、
上の茎を切って土をなるべく落とします。
そして、天気の良い日に乾かして保管します。
収穫前に霜が当たると、
茎から溶けて芋にも影響があるため、
収穫のタイムリミットは
霜が降りる前とのこと。
黒田さんの保管方法は、
ビニールハウス内に
深さ1メートル程度の穴を掘り、
その中でサトイモを貯蔵します。
この方法をとることで、
温度の変化を抑えられるそうです。
寒河江市は、
ビニールハウスの肩まで雪が積もる
地域でもあるので、雪解け水があがらない
こともポイントだそうです。
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黒田さんに「子姫芋」の
お好きな食べ方を伺ったところ、
一般的には芋煮、それから芋餅とのこと。
芋餅の材料は「子姫芋」だけ。
茹でてつぶして、納豆をかけて食べるお料理です。
芋だけでなく、
ご飯と一緒に炊いてつぶして食べても良く、
小学校の食育の授業を担当された時に、
ご飯と一緒に「子姫芋」を炊いて
納豆と醤油で味付けして
出したところ、ものすごい人気だったそう。
定番の芋煮も、芋餅もおいしそうですね。
帰り際に、「子姫芋」を
JAアグリ寒河江店で購入しました。
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帰宅後、さっそく調理しました。
黒田さんがおっしゃっていたように、
包丁の背の部分でこすると
収穫してすぐのものはきれいに皮が
剥けました。
作ったのは、芋煮です。
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「子姫芋」が予想以上に柔らかく、ねっとり!
食感が優しい。
そして美味しい。
ご飯と一緒に炊くお料理も作ってみましたが、
こちらも美味でした。
今まで食べたサトイモの中で
一番ねっとりとろけるお芋でした。
収穫はできるけど、
適期よりまだ少し早い9月に
芋煮会用の注文が来る理由に納得です。
生産量が増えて、北海道でも
食べられるようになったら嬉しいです。
◆JAアグリ寒河江店
所在地:山形県寒河江市大字西根字谷地田100-1
https://life.ja-group.jp/farm/market/detail/?id=1791
気になった方はぜひどうぞ。
取材にご協力いただきました皆様、
ありがとうございました!
今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。