爽やかな香りと美しい緑~葉肉桂を「グリーンシナモン」として~@和歌山県有田川町

こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンター、
食と農のコンサルタントの田所かおりです。

今回は、ニッケイ(肉桂)について
レポートします。

ニッキとして知られるニッケイといえば、
京都の八つ橋を思い浮かべる方も
多いのではないでしょうか。

牧野富太郎著の
『牧野新日本植物図鑑』によれば、
ニッケイは、享保年間(1716~1735)に
中国から輸入され、
所々に植えられるようになった
くすのき科の常緑高木。
日本名を肉桂としているが、
元来この語はこの種の特名ではなくて、
この類の根に近い樹皮の
最も分厚い部分の名であるので、
本種を煮系と呼ぶのはあやまりであるが、
古くから用いなれた名であるので、
それにしたがった。
とありました。

また、『日本の固有植物』によれば、
この栽培種は、
東南アジア原産種
Cinnamomum loureiroi Nees (1836)と
同一とみなされていたが、
沖縄本島北部・徳之島などに自生する
野生種と同一であると判明したため、
近年では日本固有種として
扱われるようになっている。
とのこと。

確かに、チリのバルディビアの
植物園に行ったとき、
ボランティアガイドさんが、
日本にもシナモンあるでしょう、
というようなニュアンスで
説明していたような気がします。
英語だったので、
ちょっと不安ではありますが。

ちなみに、
シナモンは近縁のセイロンニッケイに
分類されていて、
ここでいうニッケイとは別のものです。

なぜ、今回ニッケイを取り上げることに
なったのかというと、
ブドウサンショウの取材で訪ねた
かんじゃ山椒園さんで、
ニッケイがこのエリアで昔生産されて
いたから、周辺にポツポツ生えていると
教えていただいたからなのです。

そして、その葉を活用した
商品も作られているということで、
テンションUPのまま
お話を伺うことになりました。

和歌山は昔、ニッキの産地で、
京都の和菓子などにも原材料として
使われていたそうです。
大正くらいまでは、木を伐採して
幹や根の皮をはぎ取って
ニッケイの根っこを川で洗うから、
そのエリアに行くと、
あの甘く爽やかな香りが漂っていたそう。

元々、ニッケイは漢方薬として入って
来ていて、
最初に入るのが大体京都と高野山。
紀州赤紫蘇もそのうちの一つ。


かんじゃ山椒園さんでは、
木を伐採せずに、
葉を収穫し活用されています。
その粉末が綺麗な緑色なので、
「グリーンシナモン」という名前で
販売しようと考えているそうです。

乾燥した葉の香りを
嗅がせていただくと、
爽やかで少し甘い香りがしました。

収穫時期は常緑なので、
いつでも可能とのこと。

取材後、肉桂の文献を調べていたところ、
『生薬学雑誌 日本産肉桂の研究(第2報)1948年』
和歌山産の5月と9月に採集した
ニッケイの葉の精油含量は
5月の方が多く(5月1.2%、9月0.7%)、
9月採集品でもその精油含量は
陳旧な輸入品よ桂皮よりは著しく多い。
とありました。

香りだけでいえば、5月頃収穫するのが
良さそうです。

実際に外に出て、ニッケイの木を
拝見させていただきました。

こちらがニッケイの木です。
10mほどあるでしょうか。 

生の葉はこんな感じ。
表面はツルツルです。

乾燥葉より、スッキリした爽やかな香りです。

ヤブニッケイという木もこの辺りには
生えていて、こちらも爽やかな
香りのする葉を持ち、
ニッケイの仲間であるけど別物。
見分け方としては、
三本の葉脈が縦に入ることだそう。
ヤブニッケイは網状の葉脈とのこと。

植物って面白い、と改めて思いました。

この葉肉桂=
「グリーンシナモン」を使用した
・乾燥葉、粉末

・シナモンリーフアラレ(おかき)

・葉肉桂のお茶
などの商品を
かんじゃ山椒園さんが経営するショップ
「kado」でも販売されていました。

粉末にすると抹茶のような見た目ながら、
爽やかなシナモンの香り。
昔ながらのものだけど、逆に新しい。


「ブドウサンショウ」と合わせて、
和歌山の山里の新たな魅力を発見した1日でした。

◆かんじゃ山椒園 Kanja Sansho-en Inc.
和歌山県有田郡有田川町宮川129
URL:https://sansyou-en.com/
オンラインショップ:https://sansyou-en.shop-pro.jp/

◆kado
和歌山県有田郡有田川町三田453-1
tel:090-1488-9911
定休日:水曜、木曜
営業時間:9:00~17:00 
instagram:@kado_hatsumi

取材にご協力いただいた皆様、
ありがとうございました。

今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。

※参考文献
『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎著 北隆館


『日本の固有植物』加藤 雅啓、海老原 淳 編 東海大学出版会


生薬学雑誌 日本産肉桂の研究(第2報)1948年 渡邊 武、後藤 實

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