かんじゃ山椒園で知るブドウサンショウの魅力@和歌山県有田川町

こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンター、
食と農のコンサルタントの田所かおりです。

今回は、近年海外からも注目を集める
日本原産の美味しいスパイス
ブドウサンショウを
取り上げたいと思います。

サンショウといえば、うなぎ・・・
美味しいですよね。

サンショウは、ただ美味しいだけではなく、
辛味成分のサンショウオールなどの
10種以上の成分や
柑橘系の爽やかな香りのリモネンや
心を落ち着かせる快い香りのフェランドレン
バラのような甘い香りのシトロネラール
などが含まれる、
香り豊かな薬効植物です。

実サンショウは、
漢方薬として利用されてきた歴史は古く、
縄文時代、またはそれ以前とも
言われています。

そんなサンショウの魅力を探りに、
7月上旬に、和歌山県有田川町にある
かんじゃ山椒園さんを訪ねました。

代表取締役の永岡冬樹さんに
お話を伺いました。

全国でもサンショウの収穫量の70%を
占める和歌山県。
その中でも有田川町は日本一の生産量を誇る
地域です。

ブドウサンショウは、
天保年間(1830~1844年)に
有田川町遠井地区で発見された品種で、
突然変異で生じたと言われています。

ブドウの房のように沢山の果実を実らせ
肉厚で豊作性であることが特徴です。

昔からこのエリアのお宅の庭先には
ブドウサンショウが2、3本植えられていて、
活用されてきました。

その頃は奈良の漢方薬やさんが
買い付けてくれるような
ちょっと高いお小遣い稼ぎのような
商売の形でした。

昭和40年くらいの減反政策で、
田んぼからサンショウ栽培へ。
集約的な栽培になりました。
そして、供給が多くなり、
一気に値崩れが起きたそうです。

今から20年ほど前、
うなぎにかけるサンショウが茶色くて
香りもないようなもので・・。

本当のサンショウの新鮮な香りを届けたら
絶対喜んでもらえるのではないか、
生まれ育った山里が衰退していく
寂しい思いもあって、
2006年にかんじゃ山椒園を
始められたそうです。

かんじゃ山椒園さんでは、
ただ情報を発信するだけでなく、
用途や美味しさ、新たな魅力を
再発見してもらうために、
カフェやショップで様々な食べ方を
体験できるようにされています。

近年では、柑橘のレモンやシトラスに
近い香りがするということで、
海外のシェフが乾燥のブドウサンショウを
日本原産の新しいスパイスとして提案。
海外でも日本のブドウサンショウが
他のスパイスとミックスされるなどして、
様々な使い方がされているそうです。

次に、栽培について伺いました。

農業としては、
お米の栽培がメインとのことですが、
ブドウサンショウの栽培面積は
約1ヘクタールにまで増やしました。

かんじゃ山椒園さんがあるエリアは、
山で木々に囲まれていて、
朝9時、10時くらいに日が昇って、
午後3時、4時くらいに日が陰るような
ところで、
そういった環境がサンショウには
適しているのではないかとのこと。

減反政策の時、ブドウサンショウは
棚田に植えられるようになりました。

棚田は基本的には日当たりが良く、
どちらかというとサンショウは日陰を好むため、
野生のサンショウを台木にして、
その環境に適応させてきました。

日陰と日向とどちらの生産性が高いか
伺いうと、
実が太るには太陽光が必要で、
日が当たるところの方が実を沢山つける
けれども、木の寿命や健康を考えると
日当たりは程よい方が良いとのこと。

バラツキはあるけれども、
大体1本の木から7、8㎏ほど
収穫ができるそうです。

ブドウサンショウの生育過程はこちらの
資料で説明いただきました。

4月~5月に若葉、花が咲きます。
花は生産量が少なく高価で、
高級料亭の花山椒鍋などで
しゃぶしゃぶみたいにして
食されるそう。

5月中旬から6月中旬ごろの実は
種が柔らかく実が丸ごと食べられます。
爽やかさが特徴。

6月中旬から下旬ごろの実は、
種が硬くなる時期。
香りも辛味もやや強くなりますが、
フルーティーな香りが特徴。

私が伺ったのもこのタイミングで、
ブドウサンショウの実は
緑色で柔らかそうに見えましたが、
種が少し硬い状態でした。
この時期の使い方としては、
ビールや焼酎に漬け込んだり、
ぬか床に入れて、フレッシュな香りを
楽しむ使い方があるそうです。

7月中旬から8月下旬になると、
香り、辛味が強く、乾燥して利用します。
黒い種や枝を取り除くと
鮮やかな緑の粉になります。
かんじゃ山椒園さんでの収穫物の利用も
乾燥が最も多く、
生から乾燥すると三分の一ほどの
重量になるそうです。

9月下旬から10月中旬は、赤山椒。
実が熟して赤くなります。
この頃は香りも辛味も強いのですが、
熟成された上品なものになり、
味わい深く格別だそうです。
ただ、この状態までにすると
木に負担がかかるので、基本的には夏に
収穫するので貴重品です。

11月~3月は、山椒の幹は
良質なすりこぎ、箸置として
利用されます。

サンショウの葉の利用については、
実をつけるために、葉は必要なので、
最近では葉を収穫する用の木を
ブドウサンショウの実生で
作っているそうです。

ちなみに、葉のペーストは、
経営されているショップで販売の
山椒ソフトクリームに入れられています。

サンショウ栽培でのご苦労を伺うと、
農薬の飛散とのこと。
かんじゃ山椒園さんでは有機栽培で
ブドウサンショウを栽培されています。
海外は日本より農薬の基準が厳しく、
ほぼ無農薬でないと通用しないそうです。
そのため、農薬の飛散の心配のない土地を
増やしているとのことでした。

これからも日本が誇るスパイスとして、
世界中にその美味しさを広げていって欲しいと
思いました。

帰りに、直営のショップ「kado」さんに
立ち寄りました。

山椒ソフトクリームと山椒スカッシュを
いただきました。

山椒ソフトクリームは、
口にする前から爽やかな香り。
そして、口にすると、
おー!山椒だ!!おいしい!
となる、爽やかで刺激的なお味でした。
この反応は他のお客さんが全く同じ反応を
されていました(笑)

山椒スカッシュ、こちらも美味!
夏にぴったりで、つぶつぶのサンショウの
爽やかでしびれる感じが癖になる一品です。

かんじゃ山椒園さんの商品もこちらで
購入することができます。

「kado」さんは、
山間に美しい棚田が見られる名所
あらぎ島展望所の無料駐車場の
すぐそばにあります。
「kado」さんの駐車場もあります。
ぜひ、ブドウサンショウスイーツを
いただいてみてはいかがでしょうか。
商品はオンラインショップからも
購入できます。

◆かんじゃ山椒園 Kanja Sansho-en Inc.
和歌山県有田郡有田川町宮川129
URL:https://sansyou-en.com/
オンラインショップ:https://sansyou-en.shop-pro.jp/

◆kado
和歌山県有田郡有田川町三田453-1
tel:090-1488-9911
定休日:水曜、木曜
営業時間:9:00~17:00 ※ソフトクリームは10:00~
instagram:@kado_hatsumi

ブドウサンショウの魅力をたっぷり知った
取材となりました。

取材にご協力いただいた皆様、
ありがとうございました。

今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。


※参考文献
『<育てて楽しむ>サンショウ 栽培・利用加工』 
真野隆司編 創森社

『新特産シリーズ 山椒-実・花・木ノ芽の安定多収栽培と加工利用-』
内藤一夫著 農文協

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