伝統野菜「種子島安納いも」「種子島ゴールド」を訪ねて@鹿児島県西之表市

こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンター、
やさい直売所コンサルタントの田所かおりです。

今日は、種子島の伝統野菜、
「安納紅」「安納こがね」「種子島ゴールド」
のレポートです。

種子島は、鹿児島県本土の最南端、
大隅半島の佐多岬から南東方向約40㎞にあり、
長さが約58㎞、最大幅が12㎞の
細長い形をした島です。

島内の標高最高地点は282m。
お隣の屋久島と違って平べったい形をしています。
ちなみに、屋久島には九州地方の最高峰で、
標高1936mの宮之浦岳があります。

種子島と聞いて多くの人が思い浮かべるものは、
ポルトガル人による鉄砲伝来(1592年)や、
JAXA「種子島宇宙センター」かもしれません。
ちょうど訪問日の1日前にロケットが発射され、
ロケット目当ての人でにぎわっていたそうです。

鉄砲やロケットも魅力的なのですが、
私にとってはやっぱりサツマイモ。

そして、「種子島安納いも」は、
令和4年3月2日に
地域ならではの要因と結びつきを有する産品として、
国のGI(地理的表示)に登録されています。

今回は、安納いもブランド推進本部の松田憲政さんに
ご案内いただき、
種子島の中でもサツマイモの栽培に定評のある
野﨑ファームさんを訪ねました。

左から野﨑一夫さん、奥様(方言でバキー)、松田さんです。

そして今回の取材対象の3品種。

「安納紅」
在来種の「安納いも」から選抜したもの。
皮は褐紅色。
葉の裏の葉脈は紫。

「安納こがね」
在来種の「安納いも」の突然変異でできたもの。
皮は淡黄褐色。
葉の裏の葉脈は緑。

「種子島ゴールド」
「種子島紫」から皮が白色で肉色が紫色の濃い
系統を選抜したもの。
安納いもではない。

野﨑ファームさんでは、
苗の植え付けは3月から5月末に行います。
北海道からしてみたら、早いと感じますが、
種子島は一番冷え込む1月でも平均気温が11℃ほど。
さすが温暖な地域です。

ご夫婦で70アールの畑に、今年は、
安納紅、安納こがね、種子島ゴールドを
4:4:2くらいの割合で、栽培されています。

種子島で商業的な栽培に使用される苗は、
ウイルスフリー苗。
県バイテクから種子島高校に試験管苗が渡り増殖、
それを市町の増殖施設で苗に仕上げるそうです。
高校生が関わっているのが非常に珍しいですよね。

実は近年、ツルの節間が長くなり、
収量が減るなどの問題が生じ、
昨年に安納いもの苗を原原種に切り替えたそうです。

切り替え初年度はイモが丸っこく仕上がり、
バイオ苗の切り替えが疑われたそうですが、
今年はイモが長細くなる傾向で、
どうやら植え付け後の気候条件によって
形に影響があるようだということで
落ち着いているとのこと。

今となっては、個性の時代で、
ちょっと丸っこいくらいが安納いもらしくて
いいのではという意見が多く、
その形が他の品種との差別化にも一役買っていると
思いますが、
安納イモのブームの始まりのころは、
丸っこい形が市場関係者にブサイクと
言われていたそうです。
驚きです。

栽培の話に戻って、3品種の作りやすさが
全然異なるとのこと。

まず、「種子島ゴールド」は、安納いも2品種にくらべ
肥料が半分。
収量も半分。
肥料を入れるとツルボケするし、
苗が弱ければ弱いほどよく育つ。
早く掘らないとすぐ大きくなる。
今回の3品種の中で段違いに作りにくい。
依頼があるから作っている、そんな品種とのこと。

お芋の風貌からも、
ちょっと野性的で変わった感じがしますが、
野菜好きからするとその個性が魅力的です。

安納いも「安納紅」「安納こがね」にも違いがあり、
「安納こがね」の方が作りにくく、
好んで作らないそうです。

植え付け後の作業といえば、
防除と除草、特に元腐れ病対策とのこと。

基腐病は、水を介して広がる病気で、
台風後に特に広がりやすい病気です。
令和元年に本土で、
種子島では令和2年度から被害が出始め、
収量が1万トンあったが3千トンに落ち込むほど、
甚大な被害がありました。
種子島のサツマイモ関係者としては、
コロナどころじゃないくらいの感覚だったといいます。

昨年は防除などの対策方法が生産者の方に伝わり
収量が下げ止まっていて、
予断は許さないけれども明るい兆しが
見え始めているそうです。

野﨑ファームさんでは収穫が6月下旬から始まります。
収穫後のサツマイモは13~14度で1か月ほど寝かし、
糖度をしっかり上げてから出荷されます。

こちらが選果場です。
サツマイモは重さで分けられます。
SS 50~100g 
S 100~180g
M 180~300g
L 300~400g
それ以上はB品

写真左からSS、S

写真左からM、L

芋の大小で糖度に影響はないとのこと。
ただ、小さすぎる芋はスジが多くなるので
出荷されないそうです。

出荷先によって好まれる大きさが
異なるとのことで、
北海道の焼き芋やさんには大きいサイズが好まれ、
香港では炊飯器で調理するため、
お釜に入る小さいサイズが好まれるとのこと。

面白いですね。

香港への輸出用の栽培では、
作付けのピッチを短くして、植え付けを行うそうです。

取材中に試食を出してくださいました。

こちらは、奥様手作りのサツマイモの素揚げです。

糖度が上がりにくい品種「種子島ゴールド」も甘く、
「安納紅」はしっとりして強い甘みで
とても美味しかったです。
残りは、お土産に持たせてくださり、
ホテルでパクパクいただきました。
ご馳走様でした!

素揚げはお孫さんが喜んで食べてくれるそうです。
野﨑さんご夫婦の食卓では、海産物とかき揚げにしたり、
お団子にしていただくそうです。

数日後、自宅に帰って早速いただきました。
まずは、「種子島安納いも」!

やっぱり、安納いもといえば焼き芋です。

こちらが「安納紅」

こちらが「安納こがね」

果肉の色が黄金色で見るからに美味しそう!
どちらもとても甘みが強く、ねっとりした食感でした。

そのままで、もうスイーツ、いやスイーツを超える
絶品の種子島安納いもを堪能しました。

紫芋の「種子島ゴールド」では、
舟和の芋ようかんをイメージして、
紫色の芋ようかんを作りました。

材料はお芋とお砂糖とお塩のみ。
お芋が甘いのでお砂糖は控えめです。

予想以上の鮮やかな紫色に仕上がりました。

ねっとりとホクホクが両方楽しめるお味で、
美味しくいただきました。

野﨑さん、奥様、松田さん、ありがとうございました!

◆安納いもブランド推進本部
http://annouimo-brand.com/

◆野﨑ファーム
http://www.nozaki-farm.com/
安納いもなどお買い求めいただけます。

気になられた方はぜひどうぞ。
野﨑ファームさんのお芋、おすすめです。

今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事