こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンター、
やさい直売所コンサルタントの田所かおりです。
今日は、山形県の伝統野菜
「升田かぶ」のレポートです。
11月下旬に山形県酒田市鳥海山麓にある
村上正敏さんの畑を訪ねました。
村上さんは、
八幡地域の在来野菜を守り育てる会の会長で、
ちいさなちいさな在来かぶサミットも
運営されてきた方です。
主に大根とニンジンを生産されています。
余談ですが、大根が梨のようで
美味しかったです。
「升田かぶ」は、
詳しい来歴は不明ですが、
山形県庄内の升田地区で
100年以上前から栽培されてきたと言われる
在来野菜です。
お盆過ぎに播種し秋に収穫を迎え、
雪が降る時期になると甘みが増してくるそう。
かぶというと、丸い形を想像しますが、
「升田かぶ」はどちらかというと、
大根を小さくしたようなのような細長い形で、
青首。
少し曲がっているのが特徴です。
在来野菜とあって、ばらつきが出るそうで、
曲がるものもあるし、まっすぐなものもある。
大根位太くなるものもあるそう。
昔の人がどんな選抜方法をしてきたか
わからないけれども、
系統選抜は以前5、6年かけて実施し、
今は3つの畑で生産し、それぞれの畑から
全部で20~30本選抜して
ビニルハウスに移して
採種をされているそうです。
「升田かぶ」は、
かつては、焼き畑(カナ)で栽培されてきた
ことから、焼き畑のかぶ=「カナカブ」とも
呼ばれています。
山形県には、焼き畑で作られるかぶが
数種類あります。
村上さんも昔、30年以上前に他界された
おばあさまと一緒に焼き畑により「升田かぶ」を
栽培されたことがあるそうです。
昔ながらの焼き畑というのは、
住宅の材料として利用される太い木を伐採した後、
枝などが残っている土地に火をつけ灰にし、
その土地でかぶを育てるというもの。
畑に比べ焼き畑の土地は栄養分が少なく、
葉の大きさが小さめに仕上がるのだそう。
今はこのやり方でかぶを育てるのは
とても難しいそうで、
数年間草を生やし、その土地に火をつけて
焼き畑をされる方法が
昔に近い方法ではないかと仰っていました。
場所を準備するだけでも
難しいのは想像に難くありません。
村上さんは、
畑で「升田かぶ」を栽培されています。
「カナカブ」と呼ばれていたものを畑に
植えているという意味では、
ずれているという気持ちはある。
時代に合わせて作り方も変わっていくべきかな。
成長して、人間もかわっていく。
食べ物も変わっている。
こだわりすぎると、続かない。
種を守ることを優先して、
栽培方法が変わってもよいかなという気持ち。
また、とある大手のスーパーから
ブランド化を持ち掛けられたことも
あったそうですが、
一般の人が買える価格で売りたい、
在来野菜が残るのはいいけど、
高く売ることとは違う。
種を確保すること、守ることが優先。
販売はその次と仰っていました。
実際、升田地域で「升田かぶ」を
栽培されているのは
最も若い72歳の村上さん含め3人。
どうにかして後世に伝わって欲しいなという
気持ちもあって、
小学校の総合学習に力を入れている。
もし、一度栽培が途切れても、
「升田かぶ」を栽培したよね、食べたよね、
という記憶があれば、未来につながっていくかな。
とお気持ちを教えてくださいました。
「升田かぶ」の美味しい食べ方を伺うと、
そばやうどんに、おろして食べるとのこと。
確かに、辛味があり薬味にもってこいですね。
升田地域では、かつてはうさぎ汁には必需品で、
くじら汁、蛸煮、お味噌汁などで
食べられてきたそうです。
私は、ハンバーグに合わせて頂きました。
上が村上さんを真似ておろしたもの。
下は、火を通して甘みを引き出しました。
使い方によって味のバリエーションが
豊富な「升田かぶ」。
産直たわわでも販売されているとのこと。
ぜひ見つけたら、味わってみてください。
◆産直たわわ
所在地:山形県酒田市法連寺茅針谷地130-3
電話:0234-61-1601
今回、「升田かぶ」の取材を通して、
村上さんの信念を感じました。
きっと時代に合わせて栽培方法が変わっても
「升田かぶ」は誰かの手によって
守り抜かれるのではないか、
そんな気がしました。
そうそう、升田地区には、
「升田ささげ」という
在来野菜があるとのこと、
また、ぜひ伺いたいです。
今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。