![世界の北限のミカン「仙台みかん」を訪ねて@宮城県亘理郡](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/100-scaled.jpg)
こんにちは。
北海道在住、
野菜くだものハンター、
やさい直売所コンサルタントの田所かおりです。
今日は、宮城県亘理郡で栽培されている
温州ミカン「仙台みかん」のレポートです。
亜熱帯性作物であるカンキツ類の中で、
世界のカンキツ類の栽培地域としては
北限に位置する日本。
その日本の気候に合った温州ミカンは
国内カンキツ栽培面積の65%を占める、
代表的な果物です。
日本の中でも、
暖かい気候を好む温州ミカンの産地といえば、
和歌山県、愛媛県、静岡県が代表的ですが、
なんと、宮城県でミカン栽培を
始められた方がいらっしゃると聞き、
訪問したのは9月のこと。
その後、色づいたみかんを見に、
再度11月下旬に訪問しました。
こちらが、北限のミカン「仙台みかん」を
栽培されている齋藤正直さんです。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/101-460x306.jpg)
ミカンを栽培されるきっかけは、
仙台あおば青果の方から
長崎県の西海市で温暖化により
ミカンが作れなくなってくるので、
宮城県で作ってみないかと
持ち掛けられたこと。
これまでの農業人生で様々な取り組みを
試みてこられた齋藤さん。
ミカンの栽培も面白そうということで、
このプロジェクトに参加されました。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/202-460x306.jpg)
こちらは9月の畑の様子。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/201-460x306.jpg)
まだミカンは青いです。
そして、こちらが11月下旬のミカンです。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/102-460x306.jpg)
ミカンは、令和元年に初めて植栽し、
今では、
早生「興津早生」、
早生と晩生の中間の「大津4号」、
晩生「今村温州」の3品種、
計210本を栽培されています。
※詳しい品種特性は下部に掲載
それから、こちらは結構衝撃的な光景なのですが、
なんと、露地栽培のミカンとリンゴが同じ景色に!
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/106-460x692.jpg)
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/105-460x306.jpg)
ちなみに、こちらのリンゴは「サンフジ」だそう。
お隣の畑がリンゴという、
北国ならではのミカン栽培の苦労を
いくつか挙げて頂きました。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/103-460x306.jpg)
春先の湿った雪が葉に積もり、
その重みで枝が割れるように裂け目が入ること。
一昨年の春先の寒波が来て、
寒さと風にあたって、葉が全部落ちてしまったこと。
その後、葉は出てきて回復。
だんだん慣れてくるのではないかと
仰っていました。
品種によって色のつきやすさが異なり、
「興津早生」は最初にきれいにオレンジ色になるけれど、
「大津4号」は色が着くのが遅いとのこと。
こちらに関しては、
極早生品種に目を向けられていました。
数年経ったら違う品種が導入されているかも
しれませんね。
北限ならではの課題が他にも色々あるようでしたが、
どうすれば解決できるだろうかと
前向きにとらえていらっしゃるのが印象的でした。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/104-460x306.jpg)
気になるのは、ミカンのお味ですが、
樹を大きくするため、3年実を着けないようにし、
昨年初めて実らせたそうです。
近くの直売所でも販売しましたが、
人気ですぐに売り切れたそうです。
齋藤さん曰く、
買って食べるミカンとは異なり、
適度な酸味があって、味が濃い。
だから、もうミカンは買って
食べられなくなってしまったと
笑いながら話してくださいました。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/IMGP9908-2-460x306.jpg)
こちの写真は、どのミカンを収穫するか
吟味している様子。
実はこの時、結構雨が降っていました。
私も色づき始めた、収穫1か月前くらいの
ミカンを味見させていただきました。
![](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2022/12/IMGP9910-2-460x306.jpg)
この頃は、甘みはそれほど感じませんでしたが、
さわやかな酸味が口いっぱいに広がりました。
12月下旬の今頃は、「仙台みかん」として、
地元の人々の舌を楽しませている
頃ではないでしょうか。
私も齋藤さんを見習って、
チャレンジ精神を忘れないようにしたいと
感じさせられる機会となりました。
今日はこのへんで。
食と農の未来がより豊かになりますように。
マニアックな方向け情報
◆品種特性(農業技術体系 果樹編より)◆
・「興津早生」
早生温州。
「宮川早生」にカラタチの花粉を交配して
得られた珠心胚生実生個体からの選抜。
1963年にミカン農林1号として登録。
「宮川早生」は気温がやや低い地域では
果梗部に緑色が残りやすいが、
「興津早生」は着色し始めると果全体から
一斉に色づき始め、果皮色も橙色が濃い。
・「大津4号」
早生温州と晩生温州の間に成熟する系統。
1964年に神奈川県の興津祐男氏が
十万温州の種子から得た珠心胚実生個体。
1977年に品種登録。
樹勢が旺盛。
大玉系。
果皮色はやや淡く黄色ぎみ。
高糖度系に属する。
・「今村温州」
晩生温州。
1945年に福岡県の今村芳太氏が自園の
尾張系温州の変異樹として発見。
1968年に登録(登録番号:第206号)。
樹勢が極めて強く、温州ミカンのなかでは
最強に属する。
枝の分枝角度が狭く裂けやすい。