![「八列とうきび」歴史とともに味わう北海道伝統野菜](https://seed-to-harvest.jp/wp-content/uploads/2020/10/IMGP9003-scaled.jpg)
こんにちは。
北海道在住、
食と農のコンサルタント、野菜ソムリエ上級プロの
田所かおりです。
みなさんは、「八列とうきび」を
ご存知でしょうか。
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見た目は名前の通り、
実が1周8列に並んだとうもろこしで、
一般的なスイートコーンよりも
細長い形状をしています。
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実は少し大きめでぷっくりした形。
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さらにマニアックな見方をするならば、
八列とうきびは、実が2列ごとに隙間なく並び、
少し間を開けてまた2列並ぶという配置。
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とうもろこしの実の列はどれも偶数であることが
非常にわかりやすい構造をしています。
八列とうきびは、
北海道伝統野菜として知られ、
食の世界遺産「味の箱舟」にも認定されています。
(※北海道でのとうもろこしの栽培と歴史
については、最後に詳細を記載しています。)
そんな八列とうきびを取材するため、
道内でも片手に収まるほどの数少ない生産者で
日本国内で最大の栽培面積を誇る、
三笠市にある及川農園さんを訪ねました。
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及川さんが八列とうきびの栽培に
本格的に着手されたのが、
25年前の平成7年のこと。
実はそれよりも前の
農業を始められた今から42年前に、
誰も作っていないものを作ろうということで、
地元に種があった八列とうきびを栽培されました。
しかし、市場に出荷するも全然売れず、
その時はすぐに辞められたそう。
それから時が経ち、
25年前に奥様とご結婚された頃に、
奥様のお知り合いの方から
八列とうきびを作ってくれないかと
言われたことがきかっけで
再び八列とうきび生産に取り組むことになりました。
当時、八列とうきびの種はどこにもなく、
以前焼き八列とうきびを作っていた家主さんの
納屋に少しだけ残っていた種を、
1年かけて増やして、翌年から生産を始められました。
種にも寿命がありますので、ギリギリのタイミング。
その時栽培しなかったら
八列とうきびを口にすることができなくなって
いたかもしれません。
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今でも種は自家採取をされています。
普段だと畑に乾燥するまで置いておくそうですが、
虫が入ったり腐ったりするものもあり、
軒先で来年用の種を干されていました。
収穫期を迎えた畑を案内していただきました。
近くに来ると、その草丈の高いこと。
私の背丈から見上げるとこんな感じです。
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及川農園さんでは
現在1シーズンに6回の作型に分けて
八列とうきびを生産しています。
例年だと、
収穫期は8月上旬から10月20日ごろまでですが、
今年は、収穫のスタートが1週間ほど遅れ、
8月末の暑さで後半の作型の成長が進み、
10月上旬くらいの見込みとのこと。
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こちらがもうすぐ収穫時期を迎える八列とうきびです。
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収穫のタイミングは、
実が入った状態を手で触って確かめたり、
ひげの色で判断するそうです。
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熟度や収穫時期によって、
実の硬さや味わいが異なり、
8月でも十分美味しいそうですが、
気温が高い時期は実が少し硬くなる傾向とのことで、
甘みが乗ってくる9月が
一番おすすめとのこと。
味を確かめるため
道の駅三笠にある及川農園さん直営の
焼き八列とうきび屋さんに向かいました。
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炭火で焼かれたこんがりきつね色の焼き八列とうきび。
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味付けはシンプルに塩味です。
熟度違いで2本いただきました。
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まずは、こちらの比較的熟度が進んだ方。
実がしっかりして歯ごたえ十分といった感じです。
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噛めば噛むほどおいしさ、甘みを感じることができ、
天然のスナック菓子を食べているような味わいです。
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こちらがもう一方の比較的若いものです。
熟度が進んだものよりも皮が軟らかく、
味も淡泊でさっぱりとした感じです。
皮が軟らかいと表現しましたが、
一般的なスイートコーンと比べると噛み応えは
十分あります。
硬いものが苦手な方は成熟があまり進んでいないものを
お勧めいたします。
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八列とうきびは、
8列のうち、2列がくっついて並んでいるため、
間にできた隙間のおかげで、
スイートコーンよりもかぶりつきやすかったです。
道の駅のお店では、成熟度で3段階に分けて
生の八列とうきびも販売しています。
常連さんは自分の好みの硬さのものを
買っていかれるそうです。
自宅では、実をはずしてフライパンで乾煎りし、
火が通ったところでお醤油をかけ、
焦がし醤油で頂きました。
醤油味も美味しかったのですが、
八列とうきび本来の味を存分に楽しむなら、
シンプルに塩味が良いと思います。
北海道伝統野菜の八列とうきび。
今シーズンも終盤に入りました。
ぜひみなさまも、歴史に思いをはせながら、
八列とうきびを味わってみてはいかがでしょうか。
今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。
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ここからは、もっとマニアックな方向けに。
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~北海道でのとうもろこし栽培の歴史について~
1908年、松前でわずかながらとうもろこしを
栽培してたというのが、北海道で最も古い
とうもろこしの栽培記録です。
本格的な栽培は、明治に入ってからのことで、
明治元年(1867年)にアメリカから
とうもろこしを導入したことが始まりとされます。
当時は主に馬糧用として栽培が推奨されており、
そのトウモロコシが畑作地帯では人の食糧になり、
茎や葉が家畜の飼料になりました。
明治の中頃、札幌農学校の教師が
アメリカから導入した品種に、
「札幌八行」、「ロングフェロー」があり、
これらの品種は昭和初期にかけて
最も多く栽培されました。
北海道の気候条件に合うため味も良く、
それほど肥料を入れなくても収量がよかったようです。
「札幌八行」を桧山南部の農村では、「ヤドリミ」と呼び、
種子が八列「やとおり」が由来です。
冬場は粉にし、「とうきびがゆ」にして食べられました。
参考文献:
『47都道府県・地野菜/伝統野菜百科』 成瀬宇平・堀知佐子/著
『聞き書北海道の食事』 「日本の食生活全集北海道」編集委員会/編集
『北海道の食 その昔、我々の先人は何を食べていたか』 村元 直人/著