こんにちは。
北海道在住、
食と農のコンサルタント、野菜ソムリエ上級プロの
田所かおりです。
今日は、北海道の伝統野菜の一つでもある、
キャベツ「札幌大球」をご紹介します。
「札幌大球」は、昭和初期からの呼ばれ方で、
明治35年頃は「札幌甘藍」、
明治40年頃には「札幌大玉」であったそう。
品種名からもわかる通り、1球が大きく、
8㎏~17㎏、大きいものでは20㎏を超える、
巨大キャベツです。
そんな「札幌大球」に会いに北海道当別町の
高橋良一農園さんの畑を訪ねました。
高橋さんは、野菜ソムリエプロの資格をお持ちの
野菜ソムリエ仲間でもあります。
2016年11月に、日本野菜ソムリエ協会が主催する
野菜ソムリエサミットにて、
高橋さんの「札幌大球」は「美味しい野菜」として
金賞に輝きました。
高橋さんは、農家の4代目。
「札幌大球」はお父様の代から
50年以上作っている野菜。
冬季の貴重な保存食であったニシン漬けなどの
漬物づくりが盛んだった当時、
今ぐらいの時期になると、市場には
「札幌大球」や大根などの漬物用の野菜が
所狭しと並んだといいます。
『地方野菜大全』によれば、
昭和9年には、道内のキャベツ作付面積が2,164ha
のうち48%を占める主要な品種だった、
という記載があるほど。
今では、家庭で大きな単位で漬物をすることが
減ったため生産量も少なくなり、
「札幌大球」はすっかり珍しい野菜に
なってしまいました。
これだけ大きなキャベツを作るには、
一般的な栽培とは異なる部分があるだろうと、
伺ってみました。
まず、栽培期間が長い!
6月に播種、10月中旬から11月上旬に収穫。
株間(苗から苗までの距離)はなんと1メートル!
(一般的なキャベツは、50~60㎝。)
肥料は一般のキャベツの1.3~1.5倍は必要で、
外葉が大きいため水が溜まりやすく、
病気にも弱いので注意が必要とのことでした。
また、特に今年は8月中下旬の残暑で気温が高く推移し、
例年より早く結球が始まってしまった。
球も全体的に小さめに出来上がっており、
今年は割れも多く出ているそう。
確か、前職の時に栽培展示会で
様々な品目・品種を見学した際、
キャベツの担当者が「札幌大球」は
本州では上手く作れない
と言っていたのを思い出しました。
今年の傾向からすると、
温度が高めに推移すると
外葉が十分に大きくならなくても
ある程度仕上がっていれば、
早く結球してしまって、
大きなキャベツに育たないのではないかと。
同じ結球野菜のレタスも、
外葉の大きさと球の大きさが
関係していたので。
となると、気候変動を考えると、
これまでの大きさをキープするには、
より冷涼地で栽培する必要があるかもしれません。
少しマニアックな話になってしまいました。
畑で「札幌大球」を試食させていただきました。
肉厚ですが、バリバリという硬さはなく、
どちらかというと軟らかめ。
甘みを感じました。
気温が下がると、もっと甘みが増すそうです。
食べきれるサイズの
少し小さめの「札幌大球」を収穫してくださいました。
小さめとはいえ、5.7㎏
一般のキャベツとは比べものになりません。
「札幌大球」の葉の大きさを活かす料理、
ということで、
ロールキャベツを作りました。
控えめに作ったのに、お鍋に3つしか入らない。
通常のフォークとナイフで大きさが伝わるでしょうか。
肉厚ですが、煮込むと軟らかく、スープに甘みも出て
とても美味しくいただきました。
また来年以降、大きくできた年に
巨大な「札幌大球」に会いに伺いたいです。
今日はこのあたりで。
食と農の未来がより豊かになりますように。